東京高等裁判所 昭和50年(ネ)309号 判決
一、当裁判所も、被控訴人の本訴請求は原判決が認容した範囲において理由があると認める。その理由は、次のとおり附加訂正するほか、原判決の理由と同じであるから、これを引用する。
(一) 原判決の理由二枚目表第一行「図面の記載」の下に、次のとおり附加する。「そして焼切シールは、焼鏝などを用いて熱により所要部分を溶解して接着し同時に切断する意味を表わす当該技術分野における慣用法であること」
(二) 原判決の理由三枚目表第九行の次に、次のとおり附加する。
「控訴人はまた、特許発明の技術的範囲は、特許請求の範囲に基づいて定めねばならず、発明の詳細な説明の欄の記載とか図面に基いて解釈することは許されないのであつて、本件特許発明の特許請求の範囲に記載された「切断すると共に該切断辺の接着を以て筒を封ずる」は切断と接着との時間的同時性を意味するものではなく、「共に」という字句は、従来の特許公報の中で多く用いられているように、行為の連続性とか状態の一体性を意味するにすぎない旨主張する。特許発明の技術的範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定めなければならないことはいうまでもないが、明細書の発明の詳細な説明および図面の記載は、発明の技術的思想を開示するものとして必要なものであり、特許請求の範囲の記載の前提となるものであるから、特許請求の範囲に記載された技術事項の意味を正確に把握するためには、発明の詳細な説明及び図面を充分に参照すべきである。この参照が許されないなどという議論はとるに足りない。また、本件特許発明の特許請求の範囲に記載されている「共に」の字句の意味について、従来の特許公報のうちに工程の時間的同時性を意味することなく行為の連続性ないしは状態の一体性を説明する字句として用いられた例が存在するとしても、「共に」の字句が常にそのような意味しかもたないとはいえないことはいうまでもない。本件特許発明の特許請求の範囲に記載された「共に」の字句が控訴人の主張するように解すべきでないことは、さきに説明したとおりである。」
(三) 原判決の理由五枚目表末行から裏九行目までを次のように改める。
「五控訴人は、仮に「共に」の字句が切断と接着の同時性と場所的な同一性を意味するとしても、「共に」の構成要件は本件特許発明においてはたまたま記載された附随的要件であつてこの点に発明上の特徴はほとんどないのに等しいから、この要件だけを捉えて技術的抵触関係を否定するのは妥当でない旨主張する。しかしながら、特許請求の範囲には発明の詳細な説明に記載した発明の構成に欠くことができない事項のみを記載しなければならないのであるから、それに記載された事項が附随的な要件でほとんど意味を有しないなどと主張することは、本来許されないはずである。のみならず、成立に争のない甲第五号証から第八号証によれば、本件特許発明の特許請求の範囲に記載されている技術的事項のうち、「筒体から袋を機械的に連続製造すること」、「筒体に折込部を設けること」、「角袋の製法において筒を封ずるために切断することおよび接着すること」は、いずれも本件出願前公知であり、これら各点に発明の特徴を見出すことができず、本件特許発明はこれら公知の技術事項をも含めて各技術的事項を結合した全体の構成に特徴があるというべきであるから、その請求の範囲に記載された各技術事項はいずれも本件特許発明の構成要件である点において差異はない。のみならず、前記のとおり本件特許発明が角袋の形成を機械化し、能率化することを目的とし、切断と接着とが同時に行われることが角袋製造の能率化に役立つことにかんがみると、本件特許発明の構成のうち切断と接着とが同時に同じ場所で行われることは、本件特許発明の単なる附加的事項ではなく、重要な構成要件であるといわねばならない。控訴人の上記主張は失当である。」
二、以上の次第で、被控訴人の本訴請求は原判決認容の範囲において理由があり、これと同旨の原判決は正当であつて本件控訴は理由がない。